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Goldman・BofAがFed利下げ予想を年末延期、債券市場は今年の利下げ織り込み撤回

雇用統計とイラン戦争が「最後の藁」、Pimco利上げ示唆で金融政策見通し激変

By ANDY

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Goldman・BofAがFed利下げ予想を年末延期、債券市場は今年の利下げ織り込み撤回

TL;DR

  • ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカが雇用統計を受けてFed利下げ予想を年末まで延期した。
  • イラン戦争による石油価格上昇がインフレ圧力を高め、債券市場は今年の利下げ可能性をほぼ織り込まなくなった。
  • PimcoやFranklin Templetonは戦争継続なら利上げの可能性も示唆している。
  • 高金利継続環境下で日本の金融株には追い風、不動産株には逆風となる可能性が高い。

主要投資銀行が相次いでFRBの利下げ時期予想を大幅に後ずれさせている。ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカは5月10日の雇用統計発表を「最後の藁」と位置づけ、当初予想していた夏場の利下げを年末まで延期した。さらにイラン戦争の長期化による石油価格上昇がインフレ懸念を高め、債券市場では今年の利下げ可能性がほぼ織り込まれなくなっている。

雇用統計が決定打、主要行が利下げ予想を一斉延期

5月10日発表の米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比28.5万人増と市場予想の18万人を大幅に上回ったことを受け、ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカは相次いで利下げ時期予想を修正した。

ゴールドマンは「労働市場の予想以上の堅調さは、FRBが慎重姿勢を維持する根拠となる」として、当初6月に予想していた初回利下げを12月に延期。BofAも同様に年内利下げ回数を2回から1回に下方修正した。

債券市場では10年債利回りが4.7%まで上昇し、年初来高値を更新。市場参加者の間では「今年の利下げ可能性は20%程度まで低下した」(大手債券ファンド関係者)との見方が広がっている。

イラン戦争の石油価格押し上げでインフレ圧力再燃

利下げ予想延期のもう一つの要因は、イラン・イスラエル間の軍事衝突長期化による石油価格上昇だ。WTI原油先物は1バレル85ドル台まで上昇し、3月以来の高値をつけている。

Pimco(パシフィック・インベストメント・マネジメント)のダニエル・アイバーソン最高投資責任者は「戦争が6月以降も継続すれば、FRBは利上げを検討せざるを得ない」と指摘。Franklin Templetonも同様の見解を示し、「エネルギー価格の上昇が基調的インフレに波及するリスクを軽視すべきでない」として警鐘を鳴らした。

実際、4月のコアPCE価格指数は前年同月比2.8%上昇と3月の2.6%から加速しており、FRBの2%目標からの乖離が拡大している。

日本株への波及:金融株に追い風、不動産株に逆風

米金利高継続は日本株にも明確な影響を与える。過去の類似局面では、米長期金利上昇局面で日本の金融株(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ等)に資金流入が観測された。日米金利差拡大により、邦銀の外貨調達コスト優位性が高まるためだ。

一方、不動産関連株(三井不動産、三菱地所、東急不動産ホールディングス等)は過去の金利上昇局面で売り圧力を受ける傾向にある。住宅ローン金利上昇による需要減退懸念が背景だ。

商社株については、石油価格上昇の恩恵を受ける三菱商事、伊藤忠商事などのエネルギー権益保有企業と、調達コスト上昇の影響を受ける総合商社で明暗が分かれると見られている。

両論併記

📍 両論軸:高金利維持派 vs 早期緩和派

高金利維持派

FRBは慎重な金融政策を継続し、インフレ完全収束まで利下げを控えるべきである

雇用市場の過熱と地政学リスクによるインフレ圧力を考慮すれば、性急な利下げは1970年代のスタグフレーション再現につながりかねない。金融政策の信頼性確保のため、2%インフレ目標の完全達成まで高金利を維持することが長期的な経済安定につながる。また、高金利環境は金融システムの健全性向上と過度なレバレッジ抑制にも寄与する。

論者: Pimco, Goldman Sachs金利戦略チーム, セントルイス連銀ブラード前総裁

早期緩和派

高金利の長期継続は景気後退リスクを高め、雇用や企業業績に深刻な悪影響をもたらす

現在のインフレ上昇は主に一過性の地政学的要因によるものであり、基調的な物価圧力は既に鈍化している。高金利の継続は企業の設備投資抑制と消費者の購買力削減を通じて実体経済を過度に冷却させ、失業率上昇と景気後退を招く恐れがある。また、住宅市場の長期低迷は家計資産を毀損し、金融システム全体に悪影響を及ぼす可能性もある。

論者: JP Morgan債券戦略チーム, Brookings Institution, AFL-CIO労働組合連合

ANDYの統合見解

両派の論理にはそれぞれ妥当性がある。高金利維持派の懸念するインフレ再燃リスクは現実的である一方、早期緩和派の指摘する景気への悪影響も無視できない。重要なのは、FRBがデータドリブンなアプローチを維持し、雇用・インフレ・地政学リスクの動向を総合的に判断することだ。日本の投資家にとっては、どちらのシナリオが現実化しても対応できる分散投資戦略が求められる。

言及銘柄

  • 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ positive
  • 8316 三井住友フィナンシャルグループ positive
  • 8031 三井物産 neutral
  • 8058 三菱商事 positive
  • 8001 伊藤忠商事 positive
  • 8802 三菱地所 negative
  • 8801 三井不動産 negative
  • 3289 東急不動産ホールディングス negative

FAQ

なぜゴールドマンとBofAは利下げ予想を延期したのか?

5月10日の雇用統計で非農業部門雇用者数が28.5万人増と予想を大幅に上回り、労働市場の過熱懸念が高まったためです。また、イラン戦争による石油価格上昇もインフレ圧力を高める要因となっています。

債券市場はどの程度利下げを織り込んでいるのか?

現在の債券市場では今年の利下げ可能性を20%程度しか織り込んでおらず、年初の予想から大幅に後退しています。10年債利回りも4.7%まで上昇し年初来高値を更新しました。

Pimcoが利上げの可能性に言及した理由は?

イラン戦争の長期化により石油価格が上昇し続ければ、エネルギーコストが基調的インフレに波及するリスクがあるためです。実際、4月のコアPCE価格指数は2.8%まで加速しています。

高金利環境で日本の金融株が有利な理由は?

日米金利差拡大により、日本の銀行の外貨調達コスト優位性が高まるためです。過去の類似局面でも米金利上昇時には邦銀株に資金流入が観測されています。

不動産株への影響はどの程度深刻か?

住宅ローン金利上昇により不動産需要減退が懸念されるため、三井不動産や三菱地所などは過去の金利上昇局面で売り圧力を受ける傾向があります。ただし、商業不動産の収益性改善効果もあるため影響は複合的です。

出典